続)とりあえずは覗いてみよう・・・色収差のこと
ん・・・と、前回、周辺像がユルユルだの、グニャグニャだの悪口ばかり言った ( そこまで言ってないか・・・?W )もんでNIKONさんに怒られそうだなあW。まあmedaichiは双眼鏡についてはNIKONさんのファンでもあるし、ヘビーユーザでもあるから勘弁していただきましょう。
でもって、こないだのMonarch7 8×30の続きです。友人からメールで「色収差飛ばしただろ・・・」とクレームがあったので観てみましょう。色収差というと野鳥園の玄関前の防災無線を思い出しました。おおっ! 旧型のホーンスピーカから次世代型のラインアレイが新設されているではありませんかって、お話はそうじゃなくって、新機種になってから受信アンテナの取り付け位置が変わって、おあつらえ向きの5素子アンテナが並んでいます。
展望塔から柱をセンタに入れると逆光のアンテナがうまい具合に視野周辺に伸びています。外側にもう一本あれば理想的なんですがまあいいでしょう。撮影してみました。
視野の中央部では色収差は感じられません。40%過ぎたあたりから極めて僅かに現れてきますが眼視では判らないかもしれませんね。
40%を過ぎたあたりからアンテナ素子の右側に赤紫系、左側に青緑系で滲んできますがレベルは低いですし、なお外側にいって60%を過ぎてもさほど増悪しないようです。色収差については極めて優秀とまではいかなくても良好に補正されていると言えそうです。前回申し上げた発色の良さとともに好印象でした。
色収差のお勉強
光学も素人なのにブログで双眼鏡のレビューめいたことを書き散らかしているmedaichiですが、まあ、双眼鏡のお勉強のおさらいということで、ちょくちょく出てくる「色収差」についてお話しておきます。要は像周辺の色滲みの事です。
上の図はプリズムによる光の分散を示していますが、みなさん学校の理科の時間に見た覚えがありますよね。光は空中から硝材に入るときと出るときに屈折しますが、色々な波長(色)を含む白色光は波長によって屈折率が違いますから、波長の長い赤色から短い紫まで虹の様に分散されるというわけです。双眼鏡で使用される凸レンズにあっても、レンズの周辺部の形状はこのプリズムの様になりますから、凸レンズの端部を通過した光は色ごとに分かれてしまい、各色で異なった焦点を結ぶことになります。
つまり青紫系の光ほど屈折率が大きいので単レンズの場合は手前に結像します。軸上色収差といいます。要はピントの位置が波長によってズレるわけですね。双眼鏡のレンズでこんなのを覗くと星なんかだと周りが赤やら青に滲んでしまうわけです。上の図は双眼鏡で一般的な二枚のレンズを組み合わせて赤と青のズレを補正したアクロマートレンズを現しています。
軸上色収差は焦点距離のズレでしたが、こちらは波長によって結像位置の高さつまり像の大きさが異なることによってズレが発生しています。色によってできる像の倍率が違うことになり、倍率の色収といいます。具体的には周辺像が虹色に滲む現象として現れます。
ここまでのお話で思いつかれる読者もおられるでしょう。色収差の大きさはレンズの屈折力によって決まりますね。とするとレンズの屈折力を弱くして焦点距離が長くなるほど色収差を小さくすることができるでしょうが、全長1メートルの双眼鏡ってのは実用にはちょっと。また、材質形状の異なるレンズの組み合わせで収差を補正するのは昔から行われてきましたが、やたらとレンズの枚数の多い双眼鏡って工作精度や重量やコスト的に問題ありそうです。
じゃあ、色による分散が全くないガラスがあれば色収差のないレンズができるんじゃないかとなるかと・・・。ん~、残念ながら、そうした材質はありません。でも分散の少ないガラスは開発されています。特殊低分散ガラスと言ってメーカによって、ED、UD、XD他色々呼称されています。蛍石の人造単結晶で作られたフローライトが知られていましたが効果で取り扱いの難しいので、フローライト成分を含んだ光学ガラスとして開発されたものですね。レンズシステムの中に取り入れることで効果的に色収差を低減できます。特殊低分散ガラス : ED (Extra-low Dispersion)
当ブログのお客様は野鳥観察メインと思われますからこの辺にしときます。まあ、探鳥会とかでビギナさんからプロミナーだのEDだの、スコープや双眼鏡の色収差がらみのご質問もあるかと思いますので雰囲気だけ覚えていただいてもいいかも・・・。そうだなあ・・・medaichiも「そんなことも知らないのかあ・・・」みたいな顔されるのも癪だから一通りさわりだけは勉強しましたが、聞かれればこんなお話になるのはやむを得ないのですが、自分からこのネタふると周囲から人がいなくなりますW。